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スカンジナビアモダンとは

スカンジナビアモダンは、1950年代から60年代にかけて世界的に大流行しました。スウェーデン・デンマーク・ノルウェイ・フィンランドのデザインは、なぜ人気を集めたのでしょうか。

まずは、美しいスカンジナビアモダンデザインの作品達を見てみましょう。

スカンジナビアらしさとは?

スカンジナビア各国は美しい自然に囲まれています。長い冬を生きる人々の生活の中心は家庭でした。この「家庭」をいかに快適なもの、魅力的なものにするかがすべての基調になっています。

伝統的に手工芸が盛んで、英国のアーツ&クラフト運動からも刺激を受けました。1930年代にはバウハウス的な機能主義の影響も受けましたが、あまりに厳密な機能主義は醜く冷たいと非難され、美的センスを加えたデザインが作り上げられました。

シンプルで合理的な形、自然素材のデザイン、工業生産とハンディクラフツの程よいバランス、自然との融合などがその特徴です。

スカンジナビアデザインブーム

1930年代のシカゴ・パリ・ニューヨークの3つのワールド・フェアに参加したことにより、「スカンジナビアデザイン」は国際的に広まっていきました。

スカンジナビアデザインを決定的に流行らせたのは1950年代のアメリカです。第二次世界大戦後のアメリカでは、中流階級が裕福になり、郊外住宅を持つようになっていました。そんな時代の中、スカンジナビアデザインは一種のステイタス・シンボルとなりました。

1954年から57年にかけては、アメリカとカナダを巡回して「デザイン イン スカンジナビア展」が開催されました。この展覧会が大きな反響を呼び、世界的なブームへと繋がりました。

また、各国が一つにまとまり「スカンジナビア」というイメージのパブリシティを非常にうまく展開したことも、ブームの要因といえます。


スカンジナビアの椅子とデザイナー

アルヴァ・アアルト

Alvar Aalto  (1898/2/3 - 1976/5/11)

アアルトは、フィンランドの国民的英雄として敬愛されている建築家です。建築だけにとどまらず、空間を形造る椅子や照明等の家具も手掛けています。

アアルトの本名はヒューゴ・ヘンリック・アアルトです。アルヴァ・アアルトと名乗るようになったのは大学卒業後で、どのような名簿でもトップになるためという意図が考えられます。

ロシアの支配からの脱却といった時代背景もあり、アアルトはフィンランド人のアイデンティティと建築・デザインを結ぶ道を求めました。 バウハウスに影響を受けながらも、「金属家具に対抗する家具」として、フィンランドの伝統と風土が産んだ「木の感覚」のデザインに傾斜していきます。

アームチェア41 パイミオ(1933)

アアルト・レッグ

「アアルト・レッグ」と呼ばれる椅子の足があります。これは「ベント・ニー」日本では「挽き曲げ」と呼ばれる技術を使って作られたもので、有名なスツール60番以外にも多くの椅子に使われています。

アアルト・レッグは、アアルトが家具職人のオットー・コルホーネンと研究して生み出したものです。 無垢のカバ材の曲げたい部分から木目に沿って鋸で鋸目を等間隔に入れ、接着剤を付けた薄板を無垢材の木目と直交する方向に挿入して必要な角度に曲げて治具で固定し、乾燥させることにより、丈夫で美しい椅子を作り出しています。

スツール No.60(1933)

デザイン、技術、販売の三者の協力

1935年に設立され、アアルトの家具類の販売窓口となっている会社が「アルテック社」です。アアルトの世界的な評価に伴い、アルテック社の活動と名も広がっていきました。

アアルトの家具が世界的にロングセラーを保っている理由の一つには、アアルト・コルホーネン・アルテック社の三者の協力体制があると考えられます。

アームチェア406(1938)


アルネ・ヤコブセン

Arne Emil Jacobsen  (1902/2/11 - 1971/3/24)

アルネ・ヤコブセンは、1902年生まれの家具デザイナーです。彼は元々建築家でしたが、建物だけでなく、内装や家具など、あらゆるものを総合的に設計する「トータルデザイン」を目指していました。

空間のための椅子

「スワン・チェア」や「ザ・エッグ」といった椅子は、ヤコブセンが設計したSASロイヤルホテルという建物のためにデザインされたものです。

「ザ・エッグ」のコンセプトは、公共の場でもプライベートスペースを確保するというものでした。

左:スワン・チェア(1958)
右:ザ・エッグ(1958)

SASロイヤルホテル(1960)

製薬会社のためにデザインされた椅子「アントチェア」も、公共の場での使いやすさを考慮したデザインとなっています。

左:アントチェア(1952)

モダニズムの推進

ヤコブセンは、バウハウスの影響を受けたデザイナーの一人です。

バウハウスは伝統的なハンディクラフトから工業化への転換に成功しましたが、スカンジナビア諸国ではそれに反し、伝統的なものを大切にしようという機運が高まっていました。

そんな中、ヤコブセンは迷うこと無くモダニズムを推し進めました。彼のモダンな建築は伝統を重んじる市民から猛反発を受けましたが、彼の持ち前の政治力やクリエイターとしての実力を発揮し、新技術や新素材を使った画期的で歴史に残る椅子を世に送り出していきました。

ヤコブセンの作業場


ハンス・J・ウェグナー

Hans Jørgensen Wegner  (1914/4/2 - 2007/1/26)

ウェグナーは他の2人よりも少し遅く、1914年に生まれました。
1940年から3年間はヤコブセンの事務所に勤務し、その後独立しています。

チャイニーズ・チェア

彼の最初の代表作が、この「チャイニーズ・チェア」です。この椅子は、中国の明の時代に作られた椅子「圏椅」をリデザインして生み出されました。

左:チャイニーズ・チェア(1945)
右:モデルとなった中国の椅子 圏椅

ザ・チェア と Yチェア

そこから改良を重ねて生まれたのが、「ザ・チェア」や「Yチェア」です。

「ザ・チェア」は、ケネディ大統領がテレビの討論会で座った椅子として知られています。

左:ザ・チェア(1949)
右:Yチェア(1951)

ピーコックチェア

ここまでとは一風変わった作風の「ピーコックチェア」は、イギリスの様式家具をリデザインして作られました。

ピーコックチェア(1947)

スカンジナビアのデザイン

ウェグナーは有名なデンマークのデザイナーですが、デザインの源流は中国やイギリスの椅子をリデザインしたところから来ています。 スカンジナビアモダンデザインはスカンジナビアだけでなく、デザイナー達が色んな所で影響を受けつつ、スカンジナビアのテイストを加えて発展していったのです。

ウェグナー邸 ダイニング

ウェグナーのポリシー

そんなウェグナーのポリシーは、「座りやすさ」「美しさ」「クラフトマンシップ」だったと言います。彼の言うクラフトマンシップとは、「品質を落とさない限りは機械を使うこと」です。ウェグナーのそういった姿勢が、アメリカで人気を博したスカンジナビアモダンの「機能的」で「美しく」「安価」である部分に繋がっています。


さいごに

まとめ

私たちはスカンジナビアモダンのデザインの美しさが大好きで、研究を進めて行きました。しかし、色鮮やかであたたかいデザインの背景にある歴史・デザイナーの精神・文化などを知ることによって、スカンジナビアモダンデザインに対する見方は、ただ美しいだけではなくなりました。

今後もスカンジナビアモダンデザインは、世界中の人々をあたたかくつつみこんでいくと私たちは信じています。

スカンジナビアデザインは、みなさんの生活の中に当たり前のようになじんでいます。今回の発表をきっかけに、すこし周りを見渡してスカンジナビアデザインを探してみてください。そして、そのあたたかさを今一度感じてみてください。

写真出典・参考

「スカンジナビア家具とデザインの本」『スカンジナビアスタイル』No.1(2002)エイ出版社
「1冊まるごとフィンランド!」『スカンジナビアスタイル』No.5(2004)エイ出版社
「あかりの国に学ぶ美しい照明の手法」『スカンジナビアスタイル』No.8(2005)エイ出版社
「スカンジナビアデザインに出会う旅」『スカンジナビアスタイル』No.11(2006)エイ出版社
『スカンジナビアデザイン〈1〉家具と建築』渡部 千春(2003)プチグラパブリッシング
『スカンジナビアデザイン〈2〉プロダクト』渡部 千春(2003)プチグラパブリッシング
『スカンジナビアデザイン〈3〉テキスタイルとグラフィック』渡部 千春(2004)プチグラパブリッシング
『一脚の椅子・その背景―モダンチェアはいかにして生まれたか』島崎 信(2002)建築資料研究社
『美しい椅子―スカンジナビア4人の名匠のデザイン』島崎 信(2003)エイ出版社
『スカンジナビアデザインの巨人たち あしあとをたどって』萩原 健太郎(2011)ビー・エヌ・エヌ新社
『カラー版 世界デザイン史』阿部 公正 監修(1997)美術出版社
『ハンス・ウェグナーの椅子100』織田 憲嗣(2002)平凡社(コロナ・ブックス)
「SEMPRE.JP Artek-chair」http://www.sempre.jp/...(2014)
「The Story Of Scandinavian Design」http://www.smashingmagazine.com/...(2014)
「Wikimedia Commons」http://commons.wikimedia.org/(2014)

デザイン専攻科 VDコース1年
近代デザイン史 スカンジナビアモダン研究班

たかむら  ちょうつかごし  ながおかひあさ  むかい

2014年7月25日